今回は少し趣向を変えて,デザインの中でもフォント作成の話,専門用語で言えば「タイプフェイスデザイン」の話です.タイプフェイスデザインに注目するのは,今回のチュートリアルで作成するものが,主に欧文で使用される文字に対して準備された「OCRフォント」を,日本語の平仮名で「なんちゃって」で真似してみたものだからです.

文字の歴史

文字の発明から今日まで,人間は常に人間が読めて,かつ効率の良い文字を模索してきました.それは筆記用具 (書くものだけでなく,書かれるものを含め) の進化と重なる部分が大きいでしょう.「木の枝で,粘土板に」「羽の軸で,羊皮紙に」「インクジェットプリンタで,コピー用紙に」などなどです.

西暦1944に,人間はコンピュータを発明しました.コンピュータは人間を大きく上回る非常に高い計算速度と膨大な記憶容量を持っています.しかし「文字を読む」というタスクにおいて,なかなか人間の性能を上回ることができませんでした.特に難しいのは「特徴のよく似た文字をいかに識別するか?」でした.

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大量の郵便物の宛先の仕分け,雑誌に同梱のクーポンのシリアル番号,クレジットカード番号など,機械が即座に読み取って大量のデータを瞬時にさばけるようになれば大変な作業の効率化を見込むことができます.機械が書かれた文字を認識でき,さらにテキストの読み上げ機能があれば盲目の人でも文書を取り扱うことができます.

OCRフォントの発明

このようなニーズから,「コンピュータに文字を読ませたい」と考える人が出てきました.そして1961年に,ECMAという組織の優秀な技術者たちがこれを克服するために、OCR-Aフォントを開発しました.ちなみにECMAは,元々はEuropean Computer Manufacturers Associationの頭文字でしたが,現在はECMAがそのまま正式名称です.

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OCR-Aフォントは文字の曖昧さをできるだけ取り除き,コンピュータにとって読み取りやすい文字として開発されました.これによって100%の認識可能性を実現したというから驚きです.

フォントを真似る

今回のチュートリアルで作成した文字は,平仮名をOCR-Aフォントに似せて書いてみたものです.似せることに重きを置いたため,平仮名としての可読性はかなり犠牲になってしまいましたが,デザインとして興味深いものにすることができました.すみながめの中の人 (初州ういす) は,このように既存の欧文フォントの個性・特徴を,日本語文字に適用して同じファミリーの書体もどきを作る遊びが好きなのです.

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