【眺墨賞】Bumble #036

眺墨賞は，素晴らしいデザインのロゴ・タイポグラフィなどに対し敬意を表し，独自に表彰するすみながめの企画です．毎月1つの作品を選び出し，素晴らしい作品のデザインの特色を解説します．

第36回となる2019年10月の受賞は Bumble です．Bumble はアメリカのテキサス州オースティンに本社を置くソフトウェア企業で，社名と同名の Bumble というソーシャルネットワーキングのアプリを提供しています．Bumble は特に女性のエンパワーメントに注目しており，アプリにはそれを実現するユニークな仕組みが採用されています．

Bumble ロゴ

Bumble とマルハナバチ

bumble という英単語は擬音語のような語で，「(ハチが) ブンブンいう」というような意味の言葉です．また bumblebee と言えばマルハナバチという属に分類される昆虫を指し，世界に約250種ほどが知られています．マルハナバチはヨーロッパに多くの種が生息し，牧草の受粉を助ける重要な昆虫として親近感を持たれている虫のようです．

Bumble のロゴはまさに bumblebee から連想して制作されているでしょう．明るい印象の鮮やかな黄色のテーマカラーは，まさにマルハナバチの体毛の色と同じですね．このテーマカラーは， Bumble がソーシャルネットワーキングを行うサービスとしてポジティブなイメージを醸成するのに役立っていますね．

蜂の巣のモチーフ

マルハナバチはミツバチとは異なるグループの昆虫ですが，ミツバチと同じくはちみつを生産します．ミツバチよりも平均的には身体は大きいですが，はちみつの生産量はミツバチよりも少ないようです．

マルハナバチはミツバチのような巣を作ります．上に掲載した画像はマルハナバチの巣です．Bumble のロゴに描かれた六角形は，この巣の形をイメージしていると推測できますね．

ロゴにおいて六角形のモチーフがもたらすイメージについては，以前の第20回眺墨賞 Shao Industries でも考察しました．六角形はその整然な形状から先進性を象徴するものとして考えることができます．記事冒頭で軽く触れたとおり， Bumble はレディーファーストを積極的に掲げており，それが Bumble の先進性であると言えそうです．

Bumbleは男女交際における時代遅れのルールを打ち破るために作られました。…女性が最初に行動することが必要であると考え、それを皆さまに受け入れてもらうことで、時代遅れの男女の役割を打ち壊してきました。優しさと尊重を第一に、新しい交友関係を求める人々のための安全なオンラインコミュニティーを提供しています。
Bumble – デート、出会い、より良いネットワーク

ハチとサービスの世界観

蜂の巣を模した六角形を単純に採用しただけでは，アイコンは退屈なものになっていたかもしれません．Bumble のロゴでは，蜂の巣のモチーフに重ねて3本の線が描かれています．これはマルハナバチの体の縞模様のようでありながら，アイコンを退屈にさせず魅力をより高める役割を果たしていますね．

しかし，このようなハチのモチーフは単にオマケとして追加されたものではありません．Bumble のサービス全体にハチのモチーフが一貫しており，明確な世界観の構成要素なのです．

例えばオフィスには “BEE KIND” とのスローガンが掲示されていますし，創業者の Whitney Wolfe Herd 氏 (女性の方です) へのインタビュー記事へのリンクには “Keep up with our Queen Bee on the Hive! ” と書かれています (文字通りに読めば「蜂の巣にいる私達の女王蜂の足跡を辿ってみよう！」)．

また Bumble のサービスは Bumble Date の他に，Bumble BFF と Bumble Bizz という関連サービスも提供しています．特に後者の2つは，サービス名を発音すると bumblebee が含まれる形になっており，ここでもサービスの世界に蜂のモチーフを取り入れていますね．