【眺墨賞】Shao Industries #020
眺墨賞は,素晴らしいデザインのロゴ・タイポグラフィなどに対し敬意を表し,独自に表彰するすみながめの企画です.毎月1つの作品を選び出し,素晴らしい作品のデザインの特色を解説します.

第20回となる2018年6月の受賞は,Shao Industriesです.Shao Industriesは映画パシフィック・リム アップライジング (日本公開は2018年4月13日) に登場する架空の企業です.映画の中では巨大な戦闘ロボット「イェーガー」を製造する企業として登場しますが,そのロゴが大変かっこいいです.

Shao Industriesのロゴは,4つの六角形が繋げられたロゴになっています.上と左の六角形は赤く,右と下の六角形は黒で書かれています.しかし右と下の六角形は,ロゴが置かれる場所の背景色に応じて白に変えられたりしています.下の画像は引用した例です (映画の中のワンシーンです).

六角形は自然の中にも色々な場所で登場する図形です.ここでは簡単な3つの例を挙げてみます.
蜂の巣
すぐに思いつくものでは蜂の巣があります.

柱状節理
蜂の巣の他に,地質学における柱状節理も,自然の中で見いだせる六角形の一つです.柱状節理は岩体が柱状になっている節理で,多くは六角柱状になっています.玄武岩質の岩石によく見られる規則的な割れ目で,マグマの冷却面と垂直に発達します.

べナール対流
他にも六角形を作る現象として,対流があります.熱々のお味噌汁にも起きているべナール対流と呼ばれる種類の対流は,六角形の特徴的な図形を味噌汁の表面に描きます.少し分かりにくい説明ですが,引用してみましょう.

おわんに入った温かいおみそ汁をしばらくそっとしておくと、おみその小さなつぶが模様をつくっている様子を見かけることがあります。
対流がつくる不思議な模様 | 自由研究におすすめ!家庭でできる科学実験シリーズ「NGKサイエンスサイト」 | 日本ガイシ株式会社
これは、表面では蒸発によって温度が下がるためにおみそ汁が少しだけ重くなって下に沈み、かわりに下から少しだけ温かくて軽いおみそ汁がわき上がる対流という現象が起こっているためで、下降している部分と上昇している部分とがきれいに並んでハチの巣のような模様をつくります。このような対流をベナール対流といいます。
このように六角形は自然の中でも色々な場所で登場します.それは図形の特徴として,六角形が平面充填できる正多角形の中で最も頂点数の多い図形であることと関係があります.平面を充填できる正多角形は正三角形,正四角形 (正方形) ,正六角形の3種類しかありません.

このように自然界の様々な場面で登場する正六角形という図形は特別で,デザインの分野で人気のモチーフです.例えばアニメ エヴァンゲリオンでも合理的で未来的なデザインとして正六角形が活用されています.

未来的な印象を与える正六角形が,SF映画であるパシフィック・リム アップライジングで使われていることは納得がいきます.映画を鑑賞する人に,Shoa Industriesの先進性をロゴからも感じ取ってもらおうという意図を汲み取ることができます.正六角形が演出する合理感,未来感がShao Industriesのロゴデザインから感じるインパクトの根拠なのだと初州は思います.
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