眺墨賞は,素晴らしいデザインのロゴ・タイポグラフィなどに対し敬意を表し,独自に表彰するすみながめの企画です.毎月1つの作品を選び出し,素晴らしい作品のデザインの特色を解説します.

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第12回となる2017年10月の受賞は,2017年10月26日にアップデートされたAmazon社が提供するKindleアプリのロゴです.Amazon KindleはAmazon社が発売する電子書籍リーダー端末や,そのスマートフォン向けアプリ版のことです.Kindle端末は2007年11月19日に初めて発売されました.

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今回の受賞対象はスマートフォン向けアプリのアイコンです.スマートフォン向けアプリは2009年3月4日にiOS版が公開され,2010年6月29日にAndroid版が公開されました.これらはAmazon社のあるアメリカでの公開日程であり,日本ではかなり遅れた2012年10月25日にiOS版,Android版が同時に公開されています.

2017年10月のアップデートで,Kindleアプリのアイコンは刷新されました.それまでのディティールの細かくごちゃごちゃしたイラストから,要素が大きくはっきりと書かれたすっきりした印象のものに変更されました.

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Kindleの古い方のアイコンは,様々なデザイン上のセオリーに無謀にも挑戦し,そして失敗している最たる例と言えるでしょう. ”Designing better app icons“ にはアプリアイコンを素晴らしい物にするためのセオリーがいくつも書かれていますが,これを見るとKindleのアプリアイコンがいくつものセオリーを破っているのがはっきりします.

  • シンプルであることを心掛け、一つのオブジェクトにフォーカスしましょう、そしてできれば大きさが変化してもその輪郭や質感が変わらないユニークな形や要素を取り入れましょう。
  • 面白みのない複雑すぎるアイコンデザインは認識されにくいので、アイコンのコンセプトが成立しなくなるギリギリのところまで余分な部分を排除してみましょう。そして本当に認識しやすくなっているのかどうか確認しましょう。
  • アイコンにアプリ名を含める必要など全くありません。それよりもイケてる絵のコンセプトを考え出す方に時間を割きましょう。

Kindleの古いアイコンはシンプルとは言いがたいシロモノです.その中に「座った人」,「本」,「丘」,「木と葉っぱ」,そしてでかでかと「Kindle」という文字が書かれています.「一つのオブジェクトにフォーカスしましょう」という方針からまるで逸れています.また描かれている葉っぱなどの要素は過剰に細かく,小さな画面では潰れてしまうことでしょう.これは「大きさが変化してもその輪郭や質感が変わらない」に反しています.

言い換えるならKindleの古いアイコンは「面白みのない複雑すぎるアイコンデザイン」と言えるでしょう.アイコンが成立しなくなるギリギリまで余分な部分を排除すべきでした.上記に列挙したような複数のものをいくつも書き込んで雑然とした独自性を打ち出すのではなく,むしろ引き算によって洗練された個性を研ぎ澄ますべきでした.

古いKidnleのアイコンは,上に挙げた最後の項目に真っ向から挑んでいます.アイコンにアプリ名を含める必要など全くありません.なぜ書かれていたのでしょうか?長きにわたってKindleのアイコンには全く不要なアプリ名が書かれてしまう自体となっていましたが,遂にその不要性が認識されたのか,今回のアップデートで公式にアプリアイコンのデザインから削除されました.

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とは言え,それでもKindleの新しいアイコンはまだ洗練からは遠いように思います.Googleの提案するマテリアルデザインでは,アプリアイコンは単純なグリッドに従うように求めています.下の図は,Googleが提供するガイドラインにKindleの新しいアイコンを重ねてみたものです.明らかにどのラインにも従っておらず,完全に独自のデザインを貫いています.

マテリアル02

私,初州ういすかおるの好みで言うならば,フラットデザイン・マテリアルデザインに従うデザインのほうが洗練され,高級な印象を見るものに与えると感じます.しかし必ずしもデザインのトレンドに乗らねばならないものではありません.Kindleのアプリアイコンは,2017年10月のアップデートでかなり洗練に近づきました.これは大変評価すべき変化だと思います.Kindleアプリの愛用者として,この新しいアイコンは野暮ったいサービスからの脱却を意味する重要なものに感じています.

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