Inkscapeには様々な機能があり,それらを上手に使いこなすことがデザインの上達の近道です.今回はスピログラフを描画する機能を使用して,幾何学的に整った綺麗なイラストの書き方を解説します.今回作成するイラストは,平仮名の「あ」を図案化したものとなっています.

Inkscapeのスピログラフ機能は,テクステンション > レンダリング > スピログラフ から呼び出すことができます.呼び出し時に表示されるダイアログは下の画像のようなものです.

スピログラフ.png

パラメータの数は6個で,それほど使い方は複雑ではありません.Inkscape@JPの解説が詳しいので引用しましょう.

設定項目 意味 値域/単位
R–円の半径 ペン先を入れて回す歯車の半径 0-1000/px
d–ペンの半径 歯車の中心からペン先を入れる位置までの距離 0-1000/px
歯車の配置 描画用の歯車をもうひとつの歯車の内側で動かすか、外側を動かすか
回転 中心から見た描画開始点の位置 -360-360/度
品質 1回転あたりのおよそのパススナップ数

「ペン先を入れて回す」とか「歯車の中心」とか,唐突な単語が並んでいます.スピログラフが何かをご存知の人にとっては唐突でもないかもしれません.スピログラフとはある種の曲線を描くための歯車付きの定規のことなのです.おもちゃとして販売されていることもあります.

 

スピログラフとは上の画像のようなものです.スピログラフはイギリス人のデニス・フィッシャーによって発明され,1965年に初めて販売されました.のちの1998年に,スピログラフの名称はHasbro社によって商標が取得されています.

Inkscapeではスピログラフを使用して引くことのできる曲線を模して作図する機能を搭載しており,その機能名がそのまま「スピログラフ」となっているのです.スピログラフに関する説明はWikipediaに詳しく記述があります.

プラスチック製の板に歯車状の穴が空けられており、穴の内側にそれより小さい歯車 (ピニオン) を付け、ピニオンに空けられた小さな穴にボールペンや鉛筆などの筆記具の先を通す。筆記具でピニオンを回す様にして動かすことで、その軌跡が内トロコイド曲線を描き出し、万華鏡を思わせる幾何学模様となる。

ピニオンの大きさや穴の位置などによって曲線の形や大きさが変化するため、それらの組み合わせに応じて描かれる模様も様々に変化する。

百聞は一見に如かず,以下のアニメーションが分かりやすいでしょう.


Inkscapeのスピログラフ機能を使用して描画される曲線は,数学的にはトロコイド曲線と呼ばれます.トロコイドは数学的に単純な媒介変数で表示することができ,高校で数学を学んだ人にとっては馴染み深いものかもしれません.

トロコイド.png

トロコイドは英語でtrochoidと書かれます.これは古代ギリシャ語の τροχοειδής (trokhoeidḗs) に由来します.τροχοειδής の前半は τροχός (trokhós,英語で wheel.「車輪」の意味) であり,後半は εἶδος (eîdos,英語で image.「イメージ」の意味) の組み合わせの単語だそうです.つまりトロコイドは wheel image,日本語にするならば「車輪が描く図像」というような意味でしょう.

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