【眺墨賞】ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド #010

眺墨賞は,素晴らしいデザインのロゴ・タイポグラフィなどに対し敬意を表し,独自に表彰するすみながめの企画です.毎月1つの作品を選び出し,素晴らしい作品のデザインの特色を解説します.

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第10回となる2017年8月の受賞は,「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」です (以下では「BoW」と呼びます) .BoWは2017年3月3日に任天堂が発売した Nintendo WiiU / Nintendo Switch マルチプラットフォーム対応のアドベンチャーゲームです.BoWは日本でも世界でも大ヒットを記録し,2017年の日本国内の総出荷本数はSwitch版だけで46万本,WiiU版を含めると全世界で392万本を出荷しています.

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BoWのロゴはゼルダの伝説シリーズが「原点回帰」したことをとてもよく表しています.ゼルダの伝説シリーズのゲームのタイトルロゴは,その作品の1つである1998年「時のオカリナ」から日本版と海外版で同じロゴが使用されていました.「THE LEGEND OF ZELDA」と英語で書かれたロゴです.

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下にWikipediaより,2017年8月現在までに発売されたゼルダの伝説のタイトルの一覧を掲載します.

ゼルダの伝説1986年2月21日ファミリーコンピュータディスクシステム
リンクの冒険1987年1月14日ファミリーコンピュータディスクシステム
ゼルダの伝説神々のトライフォース1991年11月21日スーパーファミコン
ゼルダの伝説夢をみる島1993年6月6日ゲームボーイ
ゼルダの伝説時のオカリナ1998年11月21日NINTENDO64
ゼルダの伝説ムジュラの仮面2000年4月27日NINTENDO64
ゼルダの伝説ふしぎの木の実2001年2月27日ゲームボーイカラー
ゼルダの伝説風のタクト2002年12月13日ニンテンドーゲームキューブ
ゼルダの伝説4つの剣+2004年3月18日ニンテンドーゲームキューブ
ゼルダの伝説ふしぎのぼうし2004年11月4日ゲームボーイアドバンス
ゼルダの伝説トワイライトプリンセス2006年12月2日ニンテンドーゲームキューブ、Wii
ゼルダの伝説夢幻の砂時計2007年6月23日ニンテンドーDS
ゼルダの伝説大地の汽笛2009年12月23日ニンテンドーDS
ゼルダの伝説スカイウォードソード2011年11月23日Wii
ゼルダの伝説神々のトライフォース22013年12月26日ニンテンドー3DS
ゼルダの伝説トライフォース3銃士2015年10月22日ニンテンドー3DS
ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド2017年3月3日WiiU、NintendoSwitch

しかしゼルダの伝説は始めから日本版と海外版で同じロゴを使用していたわけではありません.1986年に初代の「ゼルダの伝説」が発売されて以降2017年までに17作品が日本でも海外でも発売されましたが,実は始めの4作品は日本では日本語で書かれたロゴが使用されていました.「The Legend of ZELDA」ではなく,日本語で「ゼルダの伝説」と書かれたロゴです.

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「始めの4作品は日本では日本語で書かれたロゴが使用されていました」と書きましたが,2作目の「リンクの冒険」はシリーズ作でありながらタイトルが異なるため,実際には3作品にだけこのカタカナ,ひらがな,漢字を使ったロゴが使用されていました.しかし先程述べたとおり,その後の作品では海外版のロゴと合わせるように英語のロゴが使用されるようになり,この日本語ロゴは使用されなくなっていました.

BoWで日本語ロゴ (歴代最初代の3作品と同じ) を再採用したことには,シリーズの原点に立ち返るという本作のメッセージが強く表現されているように見えます.例えばBoWの制作でディレクターを務めた任天堂の青沼英二氏を迎えたある記事のインタビューでは,BoWについてこのように書かれています.

今回の作品が「これまでの『ゼルダ』のアタリマエを見直す」という言葉と同時に、「『ゼルダ』の原点回帰だ」と謳われていることに、納得がいく

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日本語で書かれたロゴにはゼルダの伝説シリーズの本質を捉えた原点回帰が表現されていたのでした.一方で,グラフィックデザインとしてカタカナのロゴは流行の兆しを見せています.例えばその1つの例は「キングコング 髑髏島の巨神」です.

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「キングコング 髑髏島の巨神」は2017年3月25日に日本で公開された映画です.BoWの発売とほぼ近くして,このようなボールドなカタカナで構成されたロゴが登場していることは興味深いです.またこの前年2016年7月29日には「シン・ゴジラ」が公開されましたが,そのロゴもボールドなカタカナでした.

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また2017年9月15日に日本公開 (米国では2017年5月19日) がされた「エイリアン コヴェナント」のロゴも印象的です.これも同様にボールドなカタカナのロゴで,レトロ感と合わせてモダンで洗練された造形です.

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このように,2016年や2017年には,ボールドでソリッドなカタカナのロゴが静かに流行しています.その背景にはフラットデザインが関係していそうです.太く力強いカタカナは塗り潰しの面積が大きいため文字として読みやすく,ロゴとしての機能を十分に発揮できます.そのうえ単純な塗り潰しはフラットデザインとしてデザイン全体を整えることができます.

「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」のロゴの観察から,今後のロゴのトレンドの兆しを掴めそうです.

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