眺墨賞は,素晴らしいデザインのロゴ・タイポグラフィなどに対し敬意を表し,独自に表彰するすみながめの企画です.毎月1つの作品を選び出し,素晴らしい作品のデザインの特色を解説します.

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第2回となる2016年12月の受賞は「私たちは、忘れない。」のロゴです.これは2011年の東日本大震災から5年経過した今,改めて震災の深刻さと,それに立ち向かう人々を紹介するキャンペーンです.

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作者について調査を行いましたが,明確に個人名を特定しうる情報には至りませんでした.2016年3月2日のソラシドエア社のプレスリリースには次のような表記がありますが,デザインの作者を示しているのかバッジの制作主体を示しているのか不明確です.いずれの解釈も文法的には可能ですが,デザインの作者を意図していない,と読むのが正しそうに思えます.

運航乗務員・客室乗務員をはじめとするソラシドエアで働くスタッフ全員が「3.11 私たちは、忘れない」バッジ(日本赤十字社製作)を着用し、東日本大震災を風化させないという想いを胸に、各自仕事に臨みます。

取り上げたキャンペーン用デザインは,簡潔なイラストながら複雑な心情が非常によく描き出されています.口は笑っていますが,目は泣いています.そして空を,上を向いています.坂本九の「上を向いて歩こう」を思い出させるようです.つらい経験を乗り越えて,前向きに歩き出す様子がとても良く表現されています.

上を向いて歩う
涙がこぼれないように
思い出す 春の日
一人ぽっちの夜

赤い顔は強い感情で紅潮した様子を表現していると取れなくもないですが,この場合は「日の丸」を暗示していると理解するのが自然でしょう.白い背景に赤い丸が描かれることで暗示される日本の国旗は,日本国民全体が一致団結して課題を克服していこうとするメッセージが込められているでしょう.


ところで,日本人はイラストを描くとき,太陽を赤い色で表現することが多いように思います.「太陽を何色で表現するのか?」には国際的に興味深い違いがあるそうです.例えば欧米の人は太陽を黄色で表現することが多いそうです.太陽の色について次のような考察を行っているサイトがあります.

恒星の色は,その表面温度のみで色が決まります。太陽は、その温度からすると0.47ミクロンの波長の黒体輻射を発しているはずで、この波長は私たちが肉眼で「薄い黄色」と感じる光の波長です。

ロシアやグリーンランドなどの極地方では太陽が赤く見えることもあるそうです.緯度が高いために太陽が高く登らず,常に夕方の空のような状態になっているためです.そのような国では太陽を赤い色で表現する場合があるそうです.

日本の緯度はそれらの国と比べて低く,日中に太陽が赤く見えるようなことは(北海道の一部地域ではあるかもしれませんが)ほぼありません.それなのに太陽を「赤だ」と認識しているのは不思議です.日本人が太陽を赤だと認識している理由として色々な仮説がありますが,その1つとして「国旗が太陽を赤で表現している」というのは無視できない要因の1つかもしれません.

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