パス統合・交差を使って思い通りのロゴデザイン #054
Inkscapeではベクターグラフィックという画像を取り扱います.この画像形式はカメラで撮った写真やTwitterなどでシェアされる画像とは異なるデータ形式のため,Inkscapeの初学者は混乱することも多いかもしれません.このチュートリアルではパスの統合・交差という2つの機能に触れながらベクターグラフィックを編集する上で基本的な概念「ブーリアン演算」を習得しましょう.
まずはじめに,基本となる「パス」の概念を理解しましょう.Inkscapeの公式サイトには次のように記載されています.
パスというのは一連の直線セグメントおよび/またはベジエ曲線からなっており、他の Inkscape オブジェクトと同様に任意のフィルとストローク属性を持つことができます。
Inkscape tutorial: 上級 | Inkscape

パスを使うことで,自由自在に図形を書くことができます.上の画像では,半時計回りに90度回転したコの字のようなパスを書いています.パスは閉じていても閉じていなくてもフィルとストロークを設定することができます.
例えば今回の歯車のように,初めから全体の形を書くよりも,トゲトゲの図形とそれを切り抜く図形とを別々に書くほうが簡単な場合があります.こうしたときにパスの統合や交差は威力を発揮します.

上の画像は歯車をペンツールで手書きしたものと,パス (実際にはシェイプ) の統合を使用して作ったものを比べたものです.見ての通り,手書きするよりも圧倒的に効率的に,さらに高いクオリティで作業ができていることが分かると思います.
パスの統合・交差の機能はこのように,複数のオブジェクトを使って別の新しい図形を作成する機能です.上のGIFアニメの例では,まず星型のシェイプと円でパスの交差を行い,両方が重なった部分だけを残しています.そして次にもう一つの円と統合を行い,両方の図形が合体したようなオブジェクトを作っています.

Inkscapeのパスメニューの中にある次の4つの機能は,ブーリアン演算とも呼ばれます.
- 統合
- 差分
- 交差
- 排他
これらのブーリアン演算の機能は,図を見ると見通しよく理解できます.「差分」だけ例外的で,重ね順 (どちらが上でどちらが下か) が結果に影響しますが,他の3つの結果に重ね順は影響しません.「差分」では,下のオブジェクトを上のオブジェクトがくり抜くため,基本的には下のオブジェクトが残ることになります.

パスはシェイプと対比して考えると分かりやすいです.シェイプとは簡単に言うと,図形のプリセットのようなもので,Inkscapeでは次の4種類のシェイプを扱えます.
- 円/弧シェイプ
- 矩形 (長方形) シェイプ
- 星型シェイプ
- らせんシェイプ

シェイプについては以前の記事でも説明していますので,どうぞそちらもあわせてお読みくださいね.