眺墨賞は,素晴らしいデザインのロゴ・タイポグラフィなどに対し敬意を表し,独自に表彰するすみながめの企画です.毎月1つの作品を選び出し,素晴らしい作品のデザインの特色を解説します.

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第16回となる2018年2月の受賞は,株式会社NTTドコモが2017年12月27日から実施している利用料金キャンペーンである「ドコモの学割」のロゴです.これは一定の条件をクリアした25歳以下の利用者を対象に,1年間毎月の利用料金を1,500円割引するキャンペーンです.

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このキャンペーンのロゴは,漢字の「学」を月桂冠の飾りで囲んだデザインになっています.シンプルな角丸処理のなされたゴシック体の「学」ですが,冠部「⺍」にカタカナの「ドコモ」が隠されています.

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ロゴに文字を隠すというデザイン手法は時々目にするものです.有名な例ではキリンビールのロゴがあるでしょう.キリンビールのロゴには中国神話に現れる伝説上の霊獣である麒麟が描かれています.

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ご存知の人も多いかもしれませんが,キリンのロゴの中には文字が隠されています.カタカナの「キ」「リ」「ン」がたてがみとしっぽの毛の中に隠されているのです.公式にもこのように説明されています.

ラベルの『麒麟』のたてがみの図柄をよく見ると見つかるのが『キ・リ・ン』の小さな文字。この隠し文字は、遅くとも1933年(昭和8年)には入れられていました。

場所は下の画像を見ると分かりやすいでしょう.

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面白いことに,その由来は明らかではないそうです.

当時のデザイナーが遊び心でデザインしたとも、偽造防止のためとも言われていますが、明確な理由は謎であるところが、『麒麟』のラベルをより神秘的にしています。

また別の例では,日本円の紙幣にも隠し文字があるデザインとなっています.1,000円札,2,000円札,5,000円札,10,000円札のそれぞれ表と裏にカタカナの「ニ」「ホ」「ン」が隠されています.以下に1,000円札の裏の「ニ」「ホ」「ン」の場所を示します.興味のある人は探してみると楽しいかもしれません.

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こうした隠し文字は「誰かに伝えたくなる」と思わせる効果を持っています.FedExのロゴに矢印を隠してデザインしたLindon Leader氏は,矢印を目立たせるのではなく,あえて「隠す」ことの意味を語っています.

このデザインにおける矢印は「オチ」みたいなものだ。それに気づかなくても充分に力のあるロゴだけど、誰かがこの矢印に気づく。

そうしたらもうこのことが忘れられなくなるし、「このロゴに何が隠れているかわかる?」と誰かに言いたくなる。

ドコモの学割でも同じことが言えます.この隠し文字に気付いた誰かが人に伝え,このキャンペーンのプロモーションがネットワーク外部性によって効率的に消費者に周知されることが期待できるでしょう.商業デザインでは,このような観点が欠かせないことに気付かされます.

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