眺墨賞は,素晴らしいデザインのロゴ・タイポグラフィなどに対し敬意を表し,独自に表彰するすみながめの企画です.毎月1つの作品を選び出し,素晴らしい作品のデザインの特色を解説します.

第19回となる2018年5月の受賞は,BTOパソコン・PC通販ショップを事業とするmouseです.BTOパソコンとは Build To Oeder の略で,すなわち受注生産方式のパソコンのことです.mouseは株式会社マウスコンピューターのブランドであり,同ブランドは2016年の1月21日にブランドロゴを一新しました.次の画像がその新しいロゴです.

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このmouseのロゴの何が面白い点でしょうか?この記事では「簡素化」と「高彩化」という2つの観点から,新しいmouseのロゴを見てみましょう.

簡素化

この扇型のロゴは,チーズをモチーフとしています.mouse (ネズミ) とチーズの連想の繋がりは強いため,それほど不自然ではありませんが,とは言え「ネズミ」という名前のブランドのロゴに「ネズミではないものが描かれている」ということは特徴的です.

変更以前のロゴではチーズをモチーフの中心に据えながら,ネズミのしっぽを紛れ込ませることによって「ネズミ」っぽさを演出していました.このロゴにはネズミらしさがあるため,mouse computerという「ブランド名」との一致度は高いですが,一方で多少複雑なロゴでもあります.

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今回の変更でロゴがよりシンプルな方向に変更されたことは,ブランドの認知が向上し「しっぽがなくてもmouseだと分かる」という前提を作ることに成功したからだと考えることができます.mouseも例に漏れませんが,多くの企業ロゴは,広く一般の認知を獲得すると段々と単純化していく傾向があるようです.Appleのロゴはその例として大変有名でしょう.

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高彩化

mouseの新ロゴの色は #fff001 と,振り切った色使いです.最も明るい黄色 (#ffff00) ではないものの,かなり明るい色を使用しています.このように明るい黄色を使用している例として,Snapchatのロゴがあります.mouseの黄色はSnapchatの黄色と比べて,少しやさしく濃い黄色であることが分かります.

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ちなみにSnapchatのロゴはこのようなものです.Snapchatは2011年にスタンフォード大学にてEvan Spiegel,Bobby Murphy,Reggie Brownによって設立されたSNSです (2018年現在ではあまり話題を聞きませんね…).

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ビビッドな色使いも,最近のトレンドの一つだと初州ういすは見ています.フラットデザインで控えめな色使いが一周回って飽きられ始めたため,その反動で鮮やかな色使いはよく映えます.例えば2017年8月30日に変更された新しいYouTubeのロゴは,大変わかり易い #ff0000 の赤色を採用しています.

Screenshot_2018-07-13 YouTube ブランドの使用について - YouTube.png

ちなみに,それまでのYouTubeのロゴでは少しだけ青味がかった赤を採用していました.しかしこの変化はたいへん微妙なため取り上げるまでもないでしょう.

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重要なことは,mouseやYouTubeのロゴのように「極めて彩度の高い色」がロゴのトレンドとして上がっている,という点です.


mouseがこのロゴ変化に込めた思いは,ロゴ変更を発表したプレスリリースの中に言及があります.

より多くの皆さまに親しみやすく、覚えてもらいやすい存在になるために、ロゴを mouse computer から「mouse(マウス)」へ変更いたします。

三角形をベースとしたロゴは、これまで使用されてきたチーズのモチーフを継承しながら、更なる上昇への願いが込められています。 シンプルに、力強く、ユーザーにとっての誇りにもなるものとしてデザインされています。

このようにして新しいmouseのロゴを見てみると,今回の変更が極めて正統なロゴの進化の経路を辿っていることが見て取れます.ここで言う「シンプル」は「簡素」を,「力強い」は「高彩」を,それぞれ意味していると解釈すると,大変見通しよく理念を理解することができるでしょう.

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