【眺墨賞】レペゼン地球 #022

眺墨賞は,素晴らしいデザインのロゴ・タイポグラフィなどに対し敬意を表し,独自に表彰するすみながめの企画です.毎月1つの作品を選び出し,素晴らしい作品のデザインの特色を解説します.

第22回となる2018年8月の受賞は,レペゼン地球です.レペゼン地球はDJ社長を中心に2015年から活動しているDJグループです.レペゼンとは「○○を代表する」という意味のヒップホップ用語で、英語のrepresentがヒップホップを歌う黒人風に訛ってこのような単語として定着したと言われています.

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レペゼン地球のロゴには複数パターンがありますが,上に載せたものは彼らのセルフタイトルの楽曲「レペゼン」のアルバムアートワークに使用されたものです.この曲はレペゼン地球のメンバーが順に自己紹介をしていくような歌詞の楽曲です.

レペゼン地球のロゴは、単純にシンボルとしてシンプルで力強く、象徴的でかっこいいものになっています。アルファベットのXのような図形に上空から見下ろした雲のような模様が描かれ、彼らのグループのクールな印象を際立たせています。

このシンボルが、カタカナの「レ」と「ペ」で構成されていることに皆さんはお気づきでしょうか?シンプルで対称的に描かれているため、気づかない人もいたかもしれません。カタカナの「レ」と「ペ」は、当然レペゼン地球のグループ名の最初の2文字です。

アーティストが自身のロゴやシンボルを、その名称から作成することは珍しくありません。しかしレペゼン地球のロゴの素晴らしい点は、それを陳腐なアルファベットのロゴとせず、カタカナで作成した点にあると初州は考えています。


以下の議論を整理するために、ここではLOGOLOの記事に従って用語を定義しましょう。ロゴの記号的部分をシンボル、読める文字部分をロゴタイプ、そしてそれら全体をロゴと呼ぶことにします。

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さて、まず自身のバンド名にちなんだロゴを見てみると、アルファベットをモチーフにしたシンボルが人気であることが分かります。下の画像はマキシマムザホルモン、UVERworld、SPYAIR、浜崎あゆみ、RADWIMPS、Aphex Twinのシンボルを並べたもので、それぞれ「MTH」「UW」「SA」「A」「RW」「A」をモチーフにデザインされています。

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これらはとてもシンプルで象徴的で、シンボルとしてとても美しい一方で、その意匠そのものは典型的、ともすれば陳腐とすら言えるかもしれません。反対に、全く陳腐でない (世界中の他の誰ともかぶらない) デザインとしては、「日本語バンドの名前をそのまま描いたロゴタイプ」があります。

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名前が日本語のグループが、アルファベットを使わず名前をそのまま描いたロゴでは、シンボルを使わないロゴタイプのみのロゴとなっています。手書き風書体で作ってみたり、高級なフォントで書いてみたり、さらにそれを微調整したりなど、ロゴの様子は様々です。しかし「象徴的なアイコン」としてのシンボルの作成は、こうしたケースでは諦めていると考えられるでしょう。

上の2つのケースと比べて初州が比較的に高く評価したいのは、ひらがなや漢字を図案化してシンボルに採用している例です。下の画像は嵐、水曜日のカンパネラのロゴを並べたもので、それぞれ漢字の「嵐」「水」をモチーフにデザインされています。

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これらのような「アルファベット以外の文字に基づいたシンボル」は、普通のアルファベットを元にしたシンボルとは一線を画し、他のロゴと似にくい (個性的になりうる) というメリットがありますし、また「名前描いただけロゴタイプ」よりも象徴的なアイコンとしての使い方が可能な点でも優れています。しかしやはり残念ながら「シンプルさ」という意味では、アルファベットをモチーフに作成されたシンボルには劣ってしまい、洗練の余地はまだある印象を与えます。

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その点で、レペゼン地球のロゴのセンスの良さは頭一つ抜けていると言えるでしょう。安易にrepresentのRなどを使ったロゴに走らず、とは言え「レペゼン地球」の名前を描いただけのロゴでもありません。それでありながら、アルファベットロゴに劣らないシンプルさを持ち、力強く高度に洗練された印象を与えることに成功しています。


長々と書いてしまいましたが、評価のポイントは3つでした。

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アルファベットロゴはシンプルであり、またどれもシンボルとしても洗練されたものが多いですが、独自性はあまりなく、どれも見たことのあるような印象です。一方、嵐や水曜日のカンパネラのようにアイコンとして使えるシンボルは印象に残るため優れていますが、シンプルさは足りずいくらか野暮ったい感じがします。

レペゼン地球のロゴはカタカナを使用して、高い独自性を持っています。それでいて大変シンプルな見た目にまとめられているため、初州はこれを優れていすると評価しました。

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