眺墨賞は,素晴らしいデザインのロゴ・タイポグラフィなどに対し敬意を表し,独自に表彰するすみながめの企画です.毎月1つの作品を選び出し,素晴らしい作品のデザインの特色を解説します.

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第4回となる2017年2月の受賞は浅草にある「江戸川大学」のロゴです.江戸川大学は1990年に設立され,千葉県流山市駒木474番地に本部を置く私立大学です.

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江戸川大学のロゴタイプはスタイリッシュなステンシル風のデザインとなっています.ステンシルとは、製図やレタリングなどに使われる、同じ形を描くための文房具である「ステンシルプレート」を使用して作成された絵や字のことで,Wikipediaの「字体としてのステンシル」ではこのように説明されています.

テンプレートによる図形や文字をステンシル (stencil) という。テンプレートがちぎれないように、完全に閉じた部分がないのが特徴である。

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江戸川大学のロゴタイプは数カ所で線が途切れ,ステンシル風のデザインがなされています.スタイリッシュに見えるのは,線の細いゴシック体 (サンセリフ体) で書かれているためでしょう.こういった線の細い文字が流行したきっかけは,パソコンやスマートフォン・タブレットなどの液晶画面の高解像度化とも言われています.高解像な液晶でないと,細い線を美しく表現できませんから.

江戸川

江戸川大学のシンボルマークも特徴的で印象的です.中段に薄い青 (#88a3d4) が位置し,その上下を濃い青 (#004da0) が挟んでいます.横7 x 縦7の正方形の領域に,3 x 1の長方形が規則的に並べられたような図形となっています.

お気づきの通り,この図案はネガティブスペースを意識しています.重要なのは描かれた長方形ではなく,それらの隙間です.周辺の空間を適当に塗りつぶしたものが下の図です.こうして見てもそれほど分かりやすくないかもしれませんが,白い部分が「江戸川」の「江」の形をしています.

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こういったシンボルマークのデザインでは,アルファベットをモチーフにした図形が作成されることが非常に多いです.アルファベットは形状が簡単なため,図案化して記号として応用することが比較的簡単であることはその理由の1つかもしれません.もちろん,単純にアルファベットの使用者数が多いというのも理由でしょう.

一方で漢字を図案化し,シンボルマークとして利用する例は相対的に少ないです.大学のシンボルマークはアルファベットをモチーフにしたものが多いです.漢字をモチーフにシンプルな図形のシンボルマークを作成するには,漢字を図案化し簡略化する必要があります.

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その中で有望なのが,中国大陸の「簡体字」だと思っています.簡体字は,日本や台湾で使われる漢字よりも字画が少なく,より図案的であると言えそうです.例えば漢字「飛」は比較的複雑な字形ですが,中国大陸では「飞」と書かれます.非常に簡単です.

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これをもじって,アルファベットのように整えたものを作ったことがあります.これは「漢字デザインの進むべき方向」の1つかもしれないと思っています.今回紹介した江戸川大学のシンボルマーク「江」も,必要な字画を縦画と横画だけに抽象化・図案化しているという点で,漢字デザインの進化の1つでしょう.

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