ベクターグラフィックとラスターグラフィックの,それぞれの特性をよく理解すると,Inkscapeは何が得意で何が得意でないのかを理解する助けになります.ベクターグラフィックで得意なことは,例えばタイポグラフィやロゴ作成ですが,今回はそのうちの1つであるタイポグラフィの簡単な作り方を,ダイナミックオフセットの使い方と合わせて解説します.

タイポグラフィは文字に装飾を加えたり変形させたりするので,文字の輪郭をしっかりと強調しておかないと最終的な作品が文字として認識できなくなってしまう恐れがあります (今回使用した Tabashike というフォントはすみながめのオリジナルフォントで,これはそもそも読みにくいフォントですが…).それを回避するために今回は3重の輪郭線を作成し,文字の輪郭が変形や装飾によって失われないように工夫しています.

その工夫の1つは「ダイナミックオフセット」を使用して実現されています.ダイナミックオフセット機能をパスで構成されたオブジェクトに使用すると,選択されたオブジェクトは「ダイナミックオフセット」という種類のオブジェクトに変更されます.ダイナミックオフセットのオブジェクトは元のパスと異なりノードが無く,その代わりにひとつだけオフセットハンドルというノード (のようなもの) が付きます.画像が小さくて確認しづらいですが,以下の図を参考にしてみてください.

ダイナミックオフセット01.png

ダイナミックオフセットを適用していないオブジェクトのノードを移動させると,そのノードだけが移動し形状が変化することはよく分かるかと思います.一方で,ダイナミックオフセットを適用した後のオブジェクトに付いたオフセットハンドル (=ノードのようなもの) を移動させると,その移動量に応じてオブジェクトが拡大縮小される,ということが起こります.これがダイナミックオフセットの機能です.以下の画像は,上記の画像の2つのオブジェクトのノードとオフセットハンドルを試しに少し移動させてみたものです.

ダイナミックオフセット02.png

ダイナミックオフセットを適用する前のオブジェクトでは単純にノードの場所が移動しただけなのに対して,ダイナミックオフセットを適用したオブジェクト (ダイナミックオフセットオブジェクトと呼びます) のオフセットハンドルを動かすと全体を丸く囲むように拡大したことが見て取れると思います.上記の画像の例ではハンドルを外側に移動したのでオブジェクトは拡大されましたが,ハンドルを内側に移動させることでオブジェクトを縮小させることもできます.

ezgif-2-23e455960b.gif

今回のチュートリアルではダイナミックオフセットを活用して,文字の輪郭を縮小することを行いました.これによって文字の形状を損なわずに,簡単に文字のインセットを取ることができています.これは,Inkscapeのほぼ同等の機能である「インセット」を使用することでも実現可能です.しかしオフセットハンドルの位置を移動することで,オフセット量を直感的に調整可能である点は,単なるインセット/アウトセットの機能にはない,ダイナミックオフセット機能の強力な柔軟性です.

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