このチュートリアルで作成するデザインでは、単純化された人間のシルエットや図形が使用されています。単純な地と図に明度差のある2色を用いて、表したい概念を単純な図として表現するこのようなデザインは、一般的に「ピクトグラム」と呼ばれています。今回はこの「ピクトグラム」について少しだけ掘り下げてみましょう。

ピクトグラムの発祥

ピクトグラムは実際に様々な場所で使用されています。例えば駅や空港などの公共施設でトイレ、エレベーター、身障者の利用可能設備、レストラン、非常口、喫煙所、エスカレーターなどの場所がピクトグラムで示されているのを見たことがあるでしょう。

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ピクトグラムはもともとオーストリア生まれの哲学者オットー・ノイラート (Otto Neurath) によって発明されました。統計情報を簡単に図示する方法を模索したノイラート氏は、1936年に単純で非言語依存な方法で情報伝達する視覚記号を編み出しました。ノイラートはそれをアイソタイプ (ISOTYPE: International System Of Typographic Picture Education) と名付け、その制作ルールを「ウィーンメソッド」として標準化しました。

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ピクトグラムの普及

ノイラート氏によって開発されたアイソタイプの技法は、後にピクトグラムとして進化していきます。ピクトグラムが日本で広く使用されるきっかけとなったのは、1964年に東京で開かれた第18回夏季オリンピックでした。

オリンピックで来日するすべての国のすべての言語を会場に表示するのは難しいため、競技種目や公共設備に関する表示をピクトグラムで表示しようと選んだのは、東京オリンピックのデザイン専門委員会委員長だった勝海勝 (かつみまさる) 氏でした。オリンピックの競技種目を表すピクトグラムが体系的に作られたのはこれが世界初でした。

1964年の東京オリンピックで制作されたピクトグラムが高い評価を受けたことで、その後のオリンピックでも開催各国がそれぞれにデザインを変化させて受け継いでいるのです。例えば2018年に韓国の平昌で開催された冬季オリンピックで使用されたピクトグラムの多くは、韓国語のハングルをアレンジしてデザインされています。

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ピクトグラムの標準化

オリンピックでのピクトグラムは毎回デザインが変更されていますが、一方でこうしたピクトグラムを標準化する動きもあります。ピクトグラムは非言語依存な情報伝達の方法であるため、その機能性を一定以上に確保することは重要です。そのため規格化・標準化を推進することで、より意味の通りやすいピクトグラムの運用が実現できます。

主な準拠すべき基準として、JISとISOがあります。JISは日本工業規格 (Japanese Industrial Standards) であり、ISOは国際標準化機構 (International Organization for Standardization) です.

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例えば空港での「乗り継ぎ」を意味するピクトグラムはJISでの表示とISOでの表示が異なっていました.空港のような多様な外国から人が有る丸ような場所では,より広い標準化機構によって準備されたピクトグラムのほうが,意図が伝わりやすくて適切と言えます.JISの標準の絵が変更され,ISOに近いものとなったのは機能的な改善と言えるでしょう.

標準ピクトグラムの興味深い応用

JISやISOが標準化したピクトグラムに詳しいと,面白い発見をすることがあるようです.株式会社石井マークのTwitterアカウントが2018年3月12日にツイートしたのは,「JISとISOのピクトグラムのハイブリッド型を見た」というものでした.

佐渡ヶ島に渡るフェリー乗り場には,それを意味するピクトグラムが書かれています.こうした公共施設でピクトグラムが使用されることそれ自体は珍しいものではないでしょう.

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しかし,このピクトグラムは大変興味深いデザインだったのです.海の上に書かれた船 (フェリー) はJISで標準化されたイラストを使用しています.一方で,海の部分,波の部分についてはISOで標準化されたような,尖りのない滑らかな波が使用されているのです.

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ピクトグラムは単純でありながら,それでも大変奥の深いジャンルであることが感じられたと思います.デザインを考える上で,見逃してはならない分野でしょう.

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