ベジェ曲線で写真をトレースしてトリミング #061
「写真から被写体を切り抜きたい」という場面は,コンピュータ上で画像を取り扱っていれば自然と遭遇するシチュエーションです.実はベクターソフトウェアの Inkscape でも,写真の切り抜きはとても簡単にできるのです!今回のチュートリアルではその方法を解説するとともに,その限界についても言及します.そして初州が考える代替的な次善策もご紹介します!
得意な切り抜きと苦手な切り抜き
Inkscape では画像の切り抜きを簡単に行うことが出来ますが,動画の冒頭に説明されている通り,どんな写真でも思い通りのクオリティで切り抜けるとは限りません.例えばココナッツのように輪郭がはっきりとしている物体を切り抜くのは Inkscape は得意ですが,毛羽立った犬のように曖昧な輪郭の物体を切り抜くのは難しいです.

では犬のような曖昧な輪郭を持った画像を簡単に切り抜くにはどうしたら良いでしょうか?残念ながら決定版の方法というのは今のところ無いと言っていいでしょう.やはり曖昧な輪郭をコンピュータで取り扱うのは難しいものなのです.
暫定の次善策: remove.bg
「それでも手軽に切り抜きをしたい!」という方におすすめなのは remove.bg というウェブサービスです (無料で試用できますが,フル機能は有償です).remove.bg は機械学習を活用した画像処理で,曖昧な輪郭を持つ物体を極めて正確に背景から切り抜いてくれる優れものです.切り抜きは完全自動なので,必要なことは写真をアップロードするだけ!本当に簡単です.

耳の辺りの毛羽立ちの部分の切り抜きも,本当に高品質です.下の画像は remove.bg で切り抜いた犬の顔の部分の拡大画像です.分かりやすいように背景に市松模様を置いていますが,耳の毛羽立ちも自然な形で半透明に切り抜かれているのが分かると思います.これならケバケバした物体を切り抜きたいあなたも満足でしょう!

なぜ remove.bg が次善策か?
さて,最後に remove.bg の制限について言及しておきましょう.
- 無料で試用する場合は,出力画像の解像度は最大 0.25 メガピクセルまでに制限されます.
- それ以上の解像度の画像の場合
横 × 縦 < 250,000 px
に収まるように縮小されます
- それ以上の解像度の画像の場合
- 有償版を利用する場合も,出力画像の解像度は最大 25 メガピクセルに制限されます
- 無料で試用する場合は,商用利用は禁止されています.
- アップロードされた画像は Kaleido AI 社 (remove.bg の運営者) のプライバシーポリシーに則り第三者に共有される場合があります.
上に書いたような条件に同意できる方であれば, remove.bg は「次善策」の域を超えて,かなり積極的な使用に値するツールになるでしょう.実際,出力の品質と手軽さを考えれば十分すぎるほどです!しかし,これを「すみながめとして」お勧めするのは,少しだけ躊躇ってしまいます.
ややこしい話になりますが,すみながめの理念は「想像を自由に実現する技術を広める」です.理念に忠実であるために「できることならこれが,無償で自由なツール (Free Software) で実現できればといいのに」と思っているのです.remove.bg が決定版であると初州が考えていない理由は,こうしたことが理由なのでした (多くの方にとっては,どうでも良いこだわりかもしれませんが…!).
